深絞り(ディープドローイング)完全技術ガイド
平らなブランクから継目のないカップやケースを作る塑性加工。 絞り比、ブランク直径、絞り力、クリアランスの4つの計算が成形可否を決めます。
深絞りとは
深絞りとは、平らな金属ブランクをパンチでダイに押し込み、 材料を流動させて継目のないカップ・ケース・ハウジングを形成する塑性加工です。 切削しない、接合しない。底と側壁が一体の金属であることが、 気密性、磁気特性、寸法精度で組立品に優る理由です。
1. 加工の仕組み
主な要素は4つです。
- パンチ — ブランク中心をダイに押し込む
- ダイ — 材料が流れ込む空洞。入口は丸みを付ける
- しわ押さえ(ブランクホルダ) — フランジを押えてしわを防ぐ
- クリアランス — パンチとダイのすきま。板厚の1.2〜1.4倍が目安
ブランクはフランジから内側へ流れ、絞りエッジを越えて筒状になります。 このとき材料は薄くなるのではなく、厚さを保ったまま形を変えるのが深絞りの特徴です。
2. 成形可否を決める4つの計算
2.1 絞り比(絞り係数)
絞り比 = ブランク直径 ÷ パンチ直径一回の絞りで割れずに耐えられる最大値を限界絞り比といいます。 この値がプレスのトン数よりもよって重要で、必要な工程数を決めます。
| 材料 | 1次目の目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 深絞り鋼板(SPCC・SPCE・DC04) | 約 1.8 〜 2.0 | r値の高い材料ほど優れる |
| ステンレス(SUS304、1.4404) | 約 1.6 〜 1.8 | 加工硬化が早く、燼鈍が必要になりやすい |
| アルミニウム | 約 1.6 〜 1.8 | 相当な種類により差が大きい |
| 電磁純鉄(DT4E) | 約 1.8 〜 2.0 | 電磁弁のケースに多い |
| 黄銅・銅 | 約 1.8 〜 2.2 | 塑性が高く絞りやすい |
2.2 ブランク直径
ブランク ≈ √(d² + 4dh)d は製品直径、h は深さです。面積相当の近似で、 実際には切り代を加算します。
2.3 絞り力とプレストン数
F ≈ π · d · t · σB · kt は板厚、σB は引張強さ、k は摩擦と曲げを含めた経験係数です。 しわ押さえ力は絞り力の20〜30%を目安に加算します。
2.4 クリアランス
片側で板厚の1.2〜1.4倍が出発点です。 狭すぎると壁が削られて金型が磨耗し、広すぎるとしわになります。
3. 一回で絞りきれない場合
絞り比が限界を超えるときは、工程を分けます。
| 全体の絞り比 | 必要な工程数 | 途中燼鈍 |
|---|---|---|
| 1.6 まで | 1工程 | 不要 |
| 1.6 〜 2.4 | 2工程 | 通常不要 |
| 2.4 〜 3.2 | 3工程 | 2次目の後 |
| 3.2 以上 | 4工程以上 | 2工程ごと |
燼鈍は再結晶温度付近で行い、塑性を回復させます。 薄水の部品は治具に縫めて燼鈍しないと変形します。
4. 不良と対策
| 不良現象 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 底部や側壁の割れ | 絞り比が大きい、パンチ半径が小さい | 工程を分ける、半径を拡げる |
| フランジのしわ | しわ押さえ力不足、フランジが広すぎる | 押さえ力を上げる、ブランクを見直す |
| 揃き目・揃き痕 | ダイとの摩擦、金属接触 | 面を研磨、コーティング、潤滑剤の見直し |
| 寸法外れ・スプリングバック | 弹性モジュールが低い | カリブレーション工程を追加 |
| 耳(調子のような不揃い) | 統計的異方性 | ブランク形状の設計で補正 |
5. 材料と加工の組み合わせ
深絞りの後に仕上げが必要な場合、絞りだけで寸法を出せるかがコストを大きく左右します。
- 内径・外径の両方を寸法内に入れたい → 絞り代がえ(減肉絞り)で旋盤加工を省ける場合があります
- 平面度や抵面粗さが厳しい → 平面研磨を後工程に追加
- 側面の穴やタップ → プレス内たっぷ、または後工程のタップ機
- 磁気特性が必要(電磁弁・ソレノイド) → 消磁焼鈍を工程に組み込む
6. Balford でできること
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| プレス | 25トン 〜 350トン |
| 最大絞り直径 | 直径 250 mm まで |
| 金型 | 設計・製作を社内一貫 |
| 工法 | 深絞り、減肉絞り、プレス加工、コイング |
| 材料 | アルミニウム、SUS304(1.4404)、DC04、電磁純鉄 DT4E、黄銅 |
| 品質体制 | ISO 9001:2015 / ISO 14001:2015、PPAP Level 3 |
できないことも書きます。 Balford は ISO 13485 も AS9100 も取得していません。 医療・航空航宇の部品は、これらの認証が必須でない範囲でのみお受けしています。 締造とメッキは協力工場です。
7. よくある質問
深絞りとプレス加工の違いは?
プレス加工は材料を展張させて形を作ります。深絞りは フランジから材料を流して形を作ります。この違いが、 板厚の保ち方と寸法の出しやすさに現れます。
板厚は絞りで薄くなりますか?
後ろに向かって薄く、端に向かって厚くなります。 均一に薄くするには減肉絞り(アイアニング)を追加します。
何個から金型が元が取れますか?
形状と工程数によります。年間数千個で単工程型、 数万個以上なら順送型が利く葉ってきます。
図面だけで見積もりできますか?
できます。材料・板厚・寸法・数量がわかれば、 絞り工程と後工程を試算できます。
8. 開始のご相談
図面(PDF / DXF / STEP)をお送りください。材料、板厚、数量、 機能上重要な寸法がわかれば、絞り工程・金型方式・検査計画を返信します。