2026年10月16日 公開
金属の深絞り加工を依頼するとき、必要なのはカタログではなく「比較できる数字」です。 このページでは5社について、自社金型の有無・プレス能力・対応ロット・材質証明を並べ、 各社の最後に「どんな案件に向かないか」まで書いています。Balford は小〜中ロットの 深絞り・精密打ち抜きを自社金型で対応する枠として一番上に置いています。
先に押さえる5点
- 「深絞り」で検索して出てくる会社が、金属を絞っているとは限りません。 日本語の上位には「深絞り包装(スキンパッケージ)」という別業種のページも混ざります。図面が板金なら、必ず材質と板厚で確認してください。
- 先に聞くべきは単価ではなく金型です。 金型を誰が設計し保有するかで、納期・初品承認・後年の追加発注がすべて決まります。Balford は設計・製作とも社内で、単発15〜30日/順送30〜60日です。
- ロットで会社が分かれます。 深絞りは金型が固定費なので概ね5,000個から採算に乗ります。Balford は最低ロットを設けていませんが、昭和精工や富士金属のような専門特化型とは向く案件が違います。
- 材質証明は「あるか」ではなく「何が出るか」を確認します。 圧延材なら EN 10204 の 3.1 ミルシート(熱番との紐付け)が標準です。これを要求される案件は多く、後からでは間に合いません。
- 国内と海外で納期の構造が違います。 国内は距離が短く反応が速い。自社金型を持つ海外工場は単価と設計〜試作が速い代わりに、輸送と通関が工程に入ります。
金属の深絞り加工とは(そうでないもの)
深絞りとは、平板のブランクをダイスに押し込み、深さが直径以上になる有底の カップ形状に成形する加工です。この「深さ≧直径」が線引きで、浅く絞っただけの成形品は プレス成形であって深絞りではなく、金型・コスト・不具合の出方がまったく違います。
深絞りが効くのは、溶接シームのない薄肉の密閉容器が必要な場面です。シームがなければ 漏れ経路がなく、溶接部の検査も不要になるため、電磁弁ハウジング、ABS車速センサーハウジング、 モーターシェル、フィルターカップ、磁気シールドスリーブなどに使われます。
深絞りではないもの:板金加工でも、切削加工でもありません。そして、会社案内では 判断できません。深絞り加工の会社はプレス機・金型・金型を設計する技術者の3つで 決まります。プレス機はあるが金型を外注している会社は、納期と初品承認を、あなたが一度も 会わない相手に預けていることになります。
日本の検索で特に注意したいのは、上位に解説ページと別業種が混ざる点です。 「深絞りプレス加工とは?」「絞り加工とは?」のような解説記事、絞り加工とプレス加工の違いを 説明する記事、そしてスキンパッケージの深絞り包装が同じ結果に並びます。金属の図面で探すなら、 「メーカー」「加工 依頼」側の言葉で探すほうが早道です。
この5社をどう選んだか
- 自社金型と金型リードタイム。 設計・製作を自社で行っているか、図面承認から初品まで何日か。相場は3〜12週間です。
- 成形能力を数字で。 最大絞り径または板厚・深さ、プレス能力。「深絞り対応」だけでは能力の表明になりません。
- ロットと最低数量。 10万個未満は受け付けない会社もあれば、最低数量を設けない会社もあります。どちらも正しく、ミスマッチが時間を失わせます。
- 材質証明と品質体制。 どの証明が出るか、どの規格を取得しているか。この質問に正確に答える会社はリスクが低い会社です。
- 自社サイトで確認できること。 材質・設備・納入分野など、第三者の要約ではなく自社サイトに書かれている情報だけを使いました。
5項目は等価です。公開情報で確認できなかった項目は、推定値ではなく「未公開」と書いています。
開示: Balford はこのリストの1位で、このページの作成者でもあります。明記するのは、 自社の立場を隠したリストは読み手にとって価値がなく、検索エンジンからも評価されないからです。 競合に関する記載は、各社の日本語サイトに書かれている内容だけに限定し、選定基準は結果を見る前に 先に示しています。
深絞り加工メーカー5社の比較
5社が候補になりました。4社は日本国内で製造しており、各社の日本語サイトから3つ以上の数字が 確認できた会社だけを採っています。最後に、その会社が受けるべきでない案件も書いています。
1. Balford — 自社金型で小〜中ロットの深絞り・精密打ち抜きに向く
Balford(Zhejiang Balford Mechatronics Co., Ltd.)は中国浙江省諸曁市で12,000 m²の工場を 運営し、500台以上の設備、技術・生産120名以上、年間約5,000万個を生産しています。ブランドと 法人は2017年、製造の系譜は2000年の前身会社にさかのぼり、そこから4,000型以上の単発絞り金型が 生まれています。
注力しているのは2工程です。ファインブランキング(精衝)は、切断面そのものが 機能を担う平坦部品(シム、ワッシャー、ブラケット、IGBT用銅ベースプレート)を担当します。 減肉絞り(アイアニング)は板厚を意図的に下回るまで板厚を減らし、旋削なしで 内径・外径を保つ薄肉ハウジングを成立させます。アルミでは板厚0.35 mmまで対応します (この数値はアルミ限定です)。
成形は25〜350 tのプレス、トランスファープレス、最大絞り径Ø250 mm。金型は社内で設計・製作し、 単発15〜30日、順送・トランスファー30〜60日。見積は通常24時間以内、加工可否の回答は 技術検討後で、時間保証はしていません。
品質の表現は正確に書きます。ISO 9001:2015 認証、プロセスは IATF 16949 に整合 (認証は取得していません)。PPAP Level 3 が標準提出です。0.01 mm は図面で指定された 特定の重要機械加工部に限ります。不良率や納期遵守率の数値は公表していません。
外注範囲も開示します。バッチ熱処理、低速ワイヤ放電、不動態化、電気めっき、塗装は 当社仕様に基づき認定パートナーが実施します。大型板金は自社の粉体塗装ブース、 小物は協力会社です。切削前素材(熱間鍛造・冷間押出・冷間圧造・鋳造・粉末冶金)は ニアネットで購入し、社内で仕上げます。
向いている案件: 継ぎ目のない絞りハウジング、または精衝の機能部品 (電磁弁・センサー・モーター筐体)を、数千個から自社金型で、設計から試作まで短く回したい開発チーム。 向かない案件: 調達上の理由で国内製造が必須の場合、または大型で高トン数を要する部品。
2. 富士金属株式会社 — 深さ200mm級の超深絞りに向く
富士金属は大阪府豊中市の深絞り専門メーカーで、サイトの構成そのものが深絞りに特化しています。 公開している加工メニューは、深絞り、深さ200 mmプレス加工、超深絞り、逆絞り、 深絞り+α加工、角筒深絞り、異形深絞り、高精度深絞り、薄板・厚板深絞りと、深さと形状の 組み合わせで整理されています。
特徴的なのは「深絞りへの工法転換」を前面に出している点です。他工法で作っていた 部品を深絞りに置き換える提案を事業として掲げており、工法転換事例も公開しています。 形状難度の高い案件や、コスト構造を変えたい案件では、この提案力が選定理由になります。
一方で、創業年・プレス能力(t)・従業員数・認証は公開ページ上では確認できませんでした。 設備の詳細は「主要設備」ページにありますので、能力の突き合わせはそちらで行ってください。
向いている案件: 深さがあり、かつ角筒・異形など形状が難しい部品。他工法からの 転換を検討している案件。向かない案件: 認証の有無を最初に確認する必要がある 自動車・医療系の調達。
3. 株式会社池田製作所 — 厚板と板鍛造、金型から検査までの社内一貫に向く
池田製作所は板鍛造とプレス加工を軸に、金型設計 → 各種プレス加工 → カシメ → 溶接 → カチオン塗装 → 高精度検査までを社内で一貫対応すると明記しています。外注が工程に入ると 途切れる情報を、社内でつなげられる体制です。
設備はアイダエンジニアリング製の精密成形機 UL-6000 と、高精度プログレッシブ 加工プレス機を公開しています。板厚は5 mm以上の厚板まで対応し、サンプルとして S15C t8.0、SPHC t3.2、SPHD t8.0、SPH270 t8.0 を掲載しています。
技術的には、逆絞りと深絞りを組み合わせた真円精度の確保を前面に出しています。 真円度が効く絞り製品では、この組み合わせの設計力が効きます。創業年・プレス能力(t)・認証は 公開ページ上では確認できませんでした。
向いている案件: 厚板のプレス加工、板鍛造を絡めた成形、そして金型から塗装・ 検査まで一社でまとめたい案件。向かない案件: 薄肉(1 mm未満)の深絞りを主目的に した案件。
4. 藤田電機製作所 — 精密プレス+金型+めっき+組立の一貫受託に向く
藤田電機製作所は昭和4年(1929年)創業で、創業100周年へ向かう段階にあります。 電気計測器部品メーカーとして始まり、現在は部品から製品まで一貫して手がける体制を公開しています。
加工は精密プレス加工・金型製造、切削加工、表面処理(めっき)、受託製造 (OEM / ODM / EMS)の4領域。プレスだけで終わらせず、めっきと組立までを受託できる点が、 二次工程を別会社に出す手間を減らします。
プレス能力(t)・最大絞り径・認証は公開ページ上では確認できませんでした。90年以上の 事業継続そのものが取引先選定の材料になる一方、能力値は問い合わせで確認が必要です。
向いている案件: 精密プレス部品にめっきや組立を組み合わせ、受託製造として 一括で任せたい案件。向かない案件: 深さのある大型絞りを主目的とした案件。
5. 昭和精工株式会社 — 自動車・バッテリー・食品容器の精密プレス金型に向く
昭和精工は横浜市の精密プレス金型メーカーで、創業70年超の経験を公開しています。 単なる金型製作ではなく、SMART-TOOLINGという考え方と、加工可否の判断・課題解決 を動画で発信している点が特徴です。
プレスは TRY PRESS UL-4000kN(400 t級)を公開し、試作・サンプル取りと アフターサービスまで含めて提供しています。金型領域は自動車金型、バッテリー関連金型、 食品容器金型、その他と、用途がはっきり分かれています。
従業員数・認証は公開ページ上では確認できませんでした。金型メーカーとしての立場が明確なため、 「量産部品そのものを継続的に発注したい」場合は、量産を担う相手が別にいるかを先に確認してください。
向いている案件: 自動車・バッテリー・食品容器向けのプレス金型、およびその 試作検証。向かない案件: 金型ではなく完成部品の大量供給を主目的とした案件。
並べて比較
選定と同じ5項目で並べています。公開されていない数値は空欄にせず「未公開」と書いています。 価格は記載していません。深絞り部品は図面ごとの見積になるため、価格表を公開している会社は 概算を書いているだけです。
| 項目 | Balford | 富士金属 | 池田製作所 | 藤田電機 | 昭和精工 |
|---|---|---|---|---|---|
| 所在地 | 中国浙江省諸曁市 | 大阪府豊中市 | 日本 | 日本 | 横浜市 |
| 創業・歴史 | 2017年(製造は2000年から) | 未公開 | 未公開 | 1929年(昭和4年) | 創業70年超 |
| プレス能力 | 25〜350 t | 未公開(主要設備ページに記載) | アイダ UL-6000 ほか | 未公開 | UL-4000kN |
| 絞り深さ・寸法 | 最大径 Ø250 mm | 深さ200 mm、超深絞り | 板厚5 mm以上の厚板 | 未公開 | 未公開 |
| 対応材質 | DC01/DC04、304/316L、銅、黄銅、5052/6061 アルミ | 材質ページに記載 | S15C、SPHC、SPHD、SPH270 ほか | 未公開 | 未公開 |
| 自社金型 | あり(設計・製作とも社内) | 深絞り専門として公開 | あり(設計から検査まで社内一貫) | あり(金型製造) | あり(金型メーカー) |
| 金型リードタイム | 単発15〜30日/順送30〜60日 | 未公開 | 未公開 | 未公開 | 未公開 |
| 最低数量 | 最低数量の設定なし | 未公開 | 未公開 | 未公開 | 未公開 |
| 品質・認証 | ISO 9001:2015、IATF 16949 は整合(認証なし)、PPAP Level 3 | 未公開 | 未公開 | 未公開 | 未公開 |
| 評価サイト(G2等) | 該当なし — 部品サプライヤーは対象外 | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし |
用途別・どの会社から当たるか
| 状況 | 最初に当たる先 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 小〜中ロットの絞りハウジング(数千〜20万個/年) | Balford | 自社金型、Ø250 mm、最低数量なし、金型15〜30日 | 輸送と通関を日程に織り込む。3.1 ミルシートの要否を先に確認 |
| 深さ200mm級の超深絞り | 富士金属 | 深さ200mmと超深絞りを加工メニューとして公開 | 創業年・能力・認証が未公開。能力値は直接確認 |
| 厚板(5 mm以上)や板鍛造を絡めた成形 | 池田製作所 | 厚板対応と、金型から検査までの社内一貫 | 薄肉の深絞りが主目的なら別の候補を |
| めっき・組立まで一括で受けたい | 藤田電機製作所 | 精密プレス+金型+めっき+組立の一貫受託 | プレス能力値は未公開 |
| 自動車・バッテリー・食品容器の金型 | 昭和精工 | 用途別に金型領域を公開、UL-4000kN | 量産部品そのものの供給相手が別にいるかを確認 |
| 絞り比や工程数がまだ決まっていない | 全社に聞く | この2問で候補が最も早く絞られる | ブランク径を聞かずに見積を出す会社は推測で出している |
よくある質問
深絞り加工の金型費用はどのくらいですか?
浅い単発のカップで4桁台の後半、順送やトランスファーで社内工程を含む場合は5桁に届きます。 総額ではなく、1個あたりの金型償却スケジュールで出してもらってください。
何個くらいから深絞りは採算に乗りますか?
概ね5,000個からです。金型が固定費だからです。それ以下でも最低数量を設けていない会社なら 対応できますが、単価が金型費を負担します。
金属を絞っている会社かどうかは、どう見分けますか?
材質と板厚の書き方で分かります。金属の深絞りは板厚をミリで示し、金型とプレス能力をトンで示します。 樹脂の深絞りは熱成形で、ABS・ASA・PC・PET などの樹脂名が並びます。「深絞り」としか書いていない 場合は、板厚を聞いてください。
材質の証明は何が出ますか?
圧延材であれば EN 10204 の 3.1 ミルシートが標準です。チャージと熱番を紐付ける証明で、 図面や調達が要求する場合は事前に確認してください。初品承認の後に確認しても間に合いません。
初品まではどのくらいかかりますか?
Balford は単発の金型で15〜30日、順送・トランスファーで30〜60日(図面承認から)。 見積は通常24時間以内に返し、加工可否の回答は技術検討の後になります。
深絞り品で切削加工品を置き換えられますか?
多くの場合できます。減肉絞り(アイアニング)で板厚を計画的に薄くすると、継ぎ目のない薄肉容器が でき、旋削品を置き換えられます。コストの差は材料とタクトから出て、金型からは出ません。
中国の深絞り工場は日本のOEMにとって信頼できますか?
信頼性は地理ではなく、工程管理と開示の度合いで決まります。ISO証明の適用範囲、初品と工程内検査の 記録、PPAPレベル、外注工程の一覧を出してもらい、国内の会社に出したのと同じ質問の答えを 比べてください。
どんな材質が深絞りできますか?
ステンレス、低炭素鋼、アルミ、黄銅、銅は日常的に対応します。ニッケル合金やチタンは 絞り比と潤滑が変わるため可能ですが条件付きです。材質と板厚に対する絞り比を会社に言わせてください。
Balford の無料加工可否チェック
図面を1枚お送りください。絞れるか、何工程必要か、初品でどこが失敗しやすいかを返します。 金型の概算と納期の目安をお渡しし、営業の話はしません。無料で、発注の義務はありません。 国内の会社や大型専門の会社のほうが向いている案件なら、そのように申し上げます。 このページには、その2点で当社より優れている競合を載せています。 図面を送って加工可否を確認する。